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天文教育施設の機能と役割を果たすために(4会共同声明)

2008年12月19日要望・声明

天文教育施設設置者の皆様へ

社団法人日本天文学会 理事長 土佐 誠
日本プラネタリウム協議会 理事長 加藤 賢一
日本公開天文台協会 会長 小関高明
天文教育普及研究会 会長 松村雅文

指定管理者制度に関する日本天文学会、日本プラネタリウム協議会、
日本公開天文台協会、天文教育普及研究会共同声明

−天文教育施設の機能と役割を果たすために−


 皆様におかれましては、天文教育施設(博物館・科学館、プラネタリウム、 公開天文台など)の設置・運営等にご尽力いただき、誠にありがとうございます。

 地方自治法の改正により、平成18年から地方自治体の有する社会教育施設の 管理運営に指定管理者制度が導入され、自治体が直営しない場合は民間企業を含む団体を指定して 管理運営を委託することになりました。その結果、現在、30%を越す天文教育施設が指定管理に移行 しています。本制度は住民サービスの向上と管理運営の効率化を目的としていますが、私たちは、 効率化を追求するあまり、天文教育施設の本来の機能が損なわれることを憂慮しています。

 天文教育施設は、市民が楽しく宇宙に接することができる場であるとともに、 学校教育に活用されている教育の場であり、関連資料の収集・保存、調査研究を担っている研究機関 でもあります。
管理運営の効率化を追求することは重要なことではありますが、短期間に管理者が交代するようでは 、専門性の高い天文教育施設としての本来の役割と機能を損なうおそれがあります。天文教育施設を 適切に維持し、天文に関わる文化を継承するとともに学校教育や生涯学習に活用されるよう、関係の 皆様に次のことを要望致します。

 
要望

(1)事業を円滑に進めるのに欠かせない長期的な視点を保障するため、 継続性の確保を図っていただきたい。

(2)天文教育施設の機能と役割を維持するため、専門知識と経験を 有する職員を適正に配置し、その専門性の維持・向上に格段のご配慮をいただきたい。

[背景説明]
 天文教育施設は、市民が楽しく宇宙に接することができる社会教育施設 であると同時に、学校教育の場でもあり、関連資料の収集・保存、調査研究を担っている研究 機関でもあります。人類が長い歴史の中で築いてきた宇宙観に触れ、科学的なものの見方・考 え方を身につけることができる貴重な場です。わが国にはプラネタリウム館は約300館、また 公開天文台は約400施設あります(『プラネタリウム白書2005』及び『公開天文台白書2006』 による)。天文教育施設の役割の重要性は、平成15年8月7日の日本天文学会からの要望書 (「天文学に関する社会教育施設の充実」)においても強調され、かつその充実が望まれている ところです。

 天文教育施設は、専門性の高い施設であり、次のような特徴を持っています:
(1) 学校や家庭では困難な天体観察や天文の学習等を可能にする場
天体観察は主に夜間に行われることや、望遠鏡などの機器も必要なこと、その操作には熟練 が必要とされることから、家庭や学校において実施することは必ずしも容易ではありません。 また、天文の専門家の話を聞いたり、情報を得たりする機会も稀なことでしょう。 天文教育施設においてはこれらの機会が提供されており、その役割は重要です。

(2) 各施設における収集資料や技術の蓄積
 これまで培われて来た収集資料や技術は、住民の血税をもとにした貴重な財産です。これらの 収集資料や技術を長期的に維持・発展させ、次世代に繋いでいくことが有効活用の途です。

(3) 専門職員の活躍の場
 天文教育施設の活動の中心になるのは専門職員です。彼らが真価を発揮してこそ、適切な市民 サービスの提供が可能になります。このため、彼らが努力を惜しまぬよう活動を保障することが 大切で、そのためには長期にわたって安定した職場環境が必要です。近年は大学院の充実により、 有能な人材が多数育っており、こうした人材の確保・定着のためにも、安定した職場環境が望ま れます。

 指定管理制度導入に伴い管理運営が極端に効率化されると、上記の(1)〜(3)に影響を与えます。 また指定管理者は短期間(3〜5年程度)で代わることが想定され、こうした場合、長期的な視野 に立った継続性が必要な(2)や(3)に影響を与えます。
私たちは、このような昨今の天文教育施設を取り巻く状況を鑑み、独自の実態調査の結果を踏ま え、上述の事項について要望致します。ご高配の程、よろしくお願い申しあげます。


[付記]
  日本天文学会、日本プラネタリウム協議会、日本公開天文台協会、天文 教育普及研究会の4学協会は天文学ならびに関連領域の研究とその普及・教育を行っている機関・ 施設や個人で構成されている団体です。

 日本天文学会(理事長:土佐 誠 東北大学名誉教授)は、天文学の進歩と普及を目的とする 社団法人です。1908 年に創立され、1935 年に社団法人として文部省から認可されています。 現在は全国の天文学研究者や天文愛好家、約3,000名で組織されています。

 日本プラネタリウム協議会(略称JPA。理事長:加藤賢一 大阪市立科学館学芸課長)は、 プラネタリウムを有する施設や関係団体約180を中心としたわが国のプラネタリウム関係の研究・ 連絡団体で、国際プラネタリウム協会(IPS)の友好団体となっています。

 日本公開天文台協会(略称JAPOS。会長:小関高明 姫路市宿泊型児童館課長補佐)は、天体 観測設備を持ち、天体観望会などの公開業務を行っている天体観測施設(公開天文台)に勤務 する職員や天体観測施設など約200 の会員から構成されています。

 天文教育普及研究会(略称JSEPA。会長:松村雅文 香川大学教授)は、天文教育の振興および 天文普及活動の推進を目的とする団体です。1989年に創立され、天文に関係する社会教育施設の 職員や、小学校から大学の教員、市民レベルでの天文普及家など約600名の会員で構成されています。