2021年3月20日、初のオンライン実施となる公開講演会が開催されました。(詳細はこちら)
全国からたくさんの方にご参加いただき、誠にありがとうございました。
質問コーナーが大盛況でしたので、その一部をご紹介いたします。
- アメリカが宇宙軍を作ったり、テレビなどでも本格的に宇宙人の存在を肯定する番組があったりなどしますが、やっぱり宇宙人って存在するんですか?
宇宙のどこかに存在している可能性はあると思いますが、地球に来たり信号を送っているという確かな証拠はありません。
- なぜ、ヘリウムと炭素の間にはギャップがあるのでしょうか。
原子核の性質としてたまたまその間の元素は壊れやすいのでヘリウム原子核に順番に水素や他のヘリウムを一つずつくっつけて合成することが難しく、炭素はヘリウムが3つ集まって作られるためです。
- 元素番号は、宇宙に構成された元素の順ですか?
むしろ、宇宙の元素は原子番号順に合成されたのか、という質問かと思います。大雑把には、水素、ヘリウムから始まって大きいものが出来ていく、とは言えますが、種類によっては破砕、分裂、崩壊などによって逆に原子番号の大きなものから小さなものが作られる場合もあります。
- ジェームズ・ウェッブ望遠鏡はいつ導入されるのでしょうか?
逃げ水のように打上が延びていましたが、今日調べたところでは今年の10月31日が打上予定日となっています。
- 太陽の黒点を発見したといっていましたが、望遠鏡で太陽を見ても大丈夫だったんですか?
何か工夫したのでしょうね。調べてみてください。
- ガンマ線バーストの原因として中性子性連星の合体の線はどうでしょうか?
継続時間の短いガンマ線バーストの原因としては、最有力候補です。
- ガンマ線バーストを地球で観測できるとのことですが、人体に影響はありますか?
仮に銀河系内で太陽系を向いたガンマ線バーストが発生すると地球環境に深刻な影響を与える可能性がありますが、その確率は極めて低いです。オルドビス紀の大量絶滅がガンマ線バーストのためだという説もありますが確かではありません。
- ガンマ線バーストが全天で1日に1回起きる、というのはどのようにしてわかったのでしょうか?
空の全方向(地球に隠される領域を除く)を観測する人工衛星が、実際に年間300個ほど検出しています。
- ガンマ線バーストのエネルギーや継続時間はどの程度ばらつきがありますか?
どちらも何桁にもわたってばらついています。色々な種類があり発生環境が多様なのでしょう。
- 本筋とは離れてしまうのですが、遠くの天体のz値を特定するのはどうするのですか?水素の吸収線がもっともずれているものを探すのでしょうか?
様々な元素の吸収線を使います。また、水素による吸収端(階段状になるところ)や水素の輝線を使うことも多いです。
- バーストが起きる期間は何と相関していると思われますか?
長いガンマ線バーストは、大質量星の進化の終点としてが発生しますので、大質量星の生成の活発なときに発生頻度が高くなります。例えば、100億年前の発生頻度は現在よりも高かったことがわかっています。短いガンマ線バーストは古い中性子星の合体でも良いので、星の生成よりかなり遅れて発生するので頻度の高い期間は伸びます。
- 結局、GRBは、138億年間、いつでも起こりうる一般的な超新星爆発を、たまたま極方向から観測したもの、と理解すればよいのでしょうか? それとも特殊なユニークな超新星爆発なのでしょうか? GRBのリピーターは、また別の現象なのでしょうか??
回答しましたが、一般的な超新星爆発とは異なり、水素とヘリウムの外層を失ったむき出しの中心核が爆発するIc型超新星で、なおかつ回転が速いものだけが長いガンマ線バーストを発生すると思われています。
- 山梨の地上ロボット望遠鏡の口径は?
50cmです。
- GRBのように極方向から観測された元素存在比と、真横からみたような超新星爆発の元素存在度比は、同じなのでしょうか?
ガンマ線バーストの場合に測られる元素存在比は、光路全体にわたる母銀河内のガスのものですが、超新星爆発で測られるものは、その爆発自体で放出された物質および超新星を取り囲む近傍の物質の組成ですので、異なるものを測ることになります。
- リアルタイムではないと思いますが、1000秒も続くガンマ線バーストは何由来ですか?
宇宙初期に作られた水素とヘリウムだけの大きな星から出るという説もありますが、比較的近いものもあるので、実のところよくわかりません。
- 球状星団も100億年以上と年齢が古いですがこの星々では情報が得られないのでしょうか?
得られます。ただし、生まれてから現在までの間に発生した超新星でばらまかれた新しい物質が球状星団の星に降って混じったりする可能性もあります。
- おもしろいご講演ありがとうございます。ガンマ線の観測によって初期の星を見つけるのには、まずその時代の星がガンマ線バーストを起こす必要がある、とご講演を聞いていて思いました。そこで質問です。それほど昔の星の爆発はそもそもこれから起こりえるものなのでしょうか?その時代の星はもうすべて爆発している、という可能性はありますか?
もちろん、はるか昔に爆発しているのですが、その光が地球に届くのは未来になるものが、これからの観測対象となります。
- 2015年の重力波検出について、合体後ブラックホール質量と合体前ブラックホール2天体の質量には差があるようですが、この差が重力波として解放されているということでしょうか?
よく気づいていただきました。その通りです。
- 重元素の存在量は中性子連星の合体の頻度程度で宇宙年齢程度で合成できますか?
まだ観測例が一つしかないので足りるかどうかは分かっていません。これから何十年かかけて観測例を増やして検証する必要があります。
- なぜ軽い元素は作られやすいのですか?構造が単純なのですか?
まず、ビッグバンは高温で原子核の構成要素(陽子や中性子、その他の粒子)がバラバラになっています。その最小単位の陽子から合成が始まるので、軽い元素からとなります。
- 我々の天の川銀河系中心にあるブラックホールからガンマ線バーストは発生する可能性はないのでしょうか?また、他の銀河系の中心にあるブラックホールからガンマ線バーストが発生して、我々の天の川銀河に直撃する可能性はないのでしょうか?
銀河の中心にあるブラックホールは太陽の数百万倍〜数億倍の巨大な質量を持っていて、今日の話題として紹介した星が潰れたり合体して発生するガンマ線バーストを起こしません。しかし、別の仕組みで突発的なガンマ線放射を出す「活動銀河核」は知られています。もし我々の銀河系の中心がそのような活動を始めたら、大変なことになるかも知れません。よその銀河の中心核は十分遠いので心配ないと思います。
- 超新星爆発と中性子星連星合体の区別、見分け方をお願いします。
中性子星連星合体に伴う巨新星(キロノバ)は超新星よりはるかに暗く、色・スペクトルや、明るさの時間変化も違うので区別できます。
(2021年3月29日)